「ひとつひとつ物と向き合う」CIBONEからのメッセージ

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今年18年目を迎える“CIBONE”は、目利きたちの支持を集め続ける、ライフスタイルショップの先駆けと言える存在。2001年に外苑前の青山ベルコモンズの地下に誕生し、2014年に大通りを挟んだ向かいのビル2階にリニューアルオープンしました。

CIBONEを運営するのは、George’s、TODAY’S SPECIAL、DEAN & DELUCAなど誰もが知るライフスタイルショプを手がける株式会社ウェルカムです。店に初めて訪れた時、CIBONE独自の洗練された世界観に魅了されたという方も多いことでしょう。そんなCIBONEはどのように生まれ、なぜ今もなお感度の高い人々の好奇心を刺激し続けるのでしょうか?

CIBONEの歴史とブランドの魅力に迫ります。

CIBONE誕生の経緯

株式会社ウェルカムが創業した2000年当初は、George’sを郊外中心に出店していました。しかし都心での出店をきっかけに「その街に住む人や働く人のための店づくりを」という観点から、暮らしを編集する“ライフエディトリアルストア”としてCIBONEが誕生したのです。

「シボネ」と読むブランド名は、異国の言葉のように聞こえますが、「City Born(都会生まれ)」や「背骨」といった言葉にもかけた造語なのだとか。

CIBONEといえば定期的に開催されている展示も人気コンテンツのひとつです。その活動は立ち上げて早々から行われていました。多くのアーティストの作品を紹介し続けるうちに、東京の街にいる、感度の高い人々の心を掴むショップとなりました。

今までのCIBONE、これからのCIBONE

開放的なCIBONE Aoyamaの店舗空間をデザインしたのは、DAIKEI MILLSです。

墨モルタルと白モルタルに分けられた空間には、「いままでのCIBONEを墨モルタルで、これからのCIBONEを白モルタルで表現し、今までもこれからも大切にする」という思いが込められています。

洋服の近くに身だしなみを整えるアイテムが並べられていたり、カトラリーの近くに食にまつわる書籍が並べられていたり。商品を見てまわる事で、暮らしに新鮮さを与えてくれるものはなにかを想像させてくれます。

また、ディスプレイに使われている什器の一部は、青山ベルコモンズ時代の什器を再利用。リニューアルをすることで全て一新するのではなく、積み重ねられたCIBONEらしさが今の店舗にも受け継がれています。

物とつきあうことを提案する「New Antiques, New Classics」

CIBONEは誕生した2001年当時から、流行を追うだけではなく、長く愛でられる魅力のある物の追求をしてきました。

「すでに身の回りは自分の好きな物でひと通りそろえているけれど、これだったら1つ欲しい」「大切な人へ贈りたいプレゼントが見つかる」

物や情報であふれる時代にいながら、CIBONEがそう言われ、長年支持され続けるのには理由があります。

それは「丁寧であること」

物をつくる人の想いを細部まで汲み取り、物の価値を丁寧に伝えることを大切にし続けてきたことで、いつまでも通い続けたくなるショップになったのです。

リニューアルオープンを期に改めて掲げたコンセプトが、

「New Antiques, New Classics」です。

未来のアンティークになるような長く使いたくなる物、これからクラシックになっていくような強さのある物に注目し、「物とつきあう」ことを提案し続けています。

移転リニューアル後は、商品をより厳選し、セレクトや展示をしてきたCIBONE。日本人作家による作品も増え、「日本に来たらCIBONEに寄るようにしている」と、海外の方がリピートして訪れることも多くなってきたと言います。

丁寧に組み立てられた展示と、洗練されたセレクトアイテム

作家の感性により深く触れられるCIBONE Aoyamaの展示は、入口のギャラリースペースで開催されています。

展示ではベテランの作家はもちろん、これからもさらに活躍するであろう若手の作家にもフォーカスを当てて紹介。シーズンらしさやその時どきの作家との出会いを大切にしながら、ルールに縛られすぎないように展示を組み立てているそうです。

EXHIBITION「The Ordinary STUDIO NICHOLSON」。イギリス人デザイナーNick Wakeman(ニック・ウェイクマン)が手がけるファッションブランドの2019春夏のコレクション。ミニマルに仕上げられた展示空間からは、テーマである洗練された“普通“が感じられる。(*会期は終了しています)

展示の企画や商品のセレクトを統括するのは、MDチーフの今川拓人さん。CIBONEに10年以上携わる今川さんですが、普段からアンテナを張り、リサーチや紹介から商品や作家を見つけだしているそうです。

このように独自の視点でセレクトすることで、他のショップでは見たことが無いようなアイテムとも出会うことができるのです。

MDチーフ 今川拓人さん

今川さんは「作家とのつながり」を大切にしているといいます。「プロダクトとして成立していない段階であっても、どういうものが10年後、100年後のアンティークやクラシックになっていくのか、作家さんと一緒に模索していきたい。CIBONEは作家さんにとって実験の場でもあり、その機会を大切に一緒に成長していけたらと考えています」

オランダ人デザイナー、Piet Hein Eekによる作品。スクラップ材木や工場廃棄物などの素材を使用し、多くの時間と手間をかけた家具はCIBONEが取り扱う主力商品のひとつ。何年使っても飽きることのない、作品の力強さを感じる。
Philippe Bouveretによる作品。上部の水が入った球体から、ボトルの中に雫が落ちるたびにハート型ができ、クスリと笑わせてくれる。アナログな手法が愛を示してくれるだろう。

完成されたプロダクトをセレクトするだけではなく、これからのアンティークやクラシックを創り出すような、可能性を秘めた作家たちとものづくりをしていく。そういった物や人に対する姿勢も、CIBONEが支持される理由のひとつだと言えるでしょう。

フラワーアーティスト木村亜津による作品。CIBONEのために制作され、フレームの中に押し花が入ることで、壁に新鮮な印象を与えてくれる。
プロダクトデザイナー、岩元航大による作品。大量生産される塩ビ管を吹きガラスの製法でフラワーベースとして再生。

これからのCIBONE

さまざまなライフスタイルショップがある中で、別格の存在感を放つCIBONE。

暮らしを編集するための明確な視点を持ち、アイテムに込められた想いやストーリーを捉えたセレクト。「New Antiques, New Classics」をつくる作家たちとの共創にも力を入れることでより一層、芯のあるブランドになっているのです。

「同じアイテムでもCIBONEで買いたい」

そう思わせてくれる魅力がCIBONEにはあります。

執筆:宇治田エリ/撮影:橋本美花/編集:柿内奈緒美

CIBONE Aoyama

住所 東京都港区南青山 2-27-25 2F
営業時間 11:00~21:00


定休日 不定休
サイト http://www.cibone.com/

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Eri Ujita
Eri Ujita
ライター
フリーランスライター 美術大学・大学院にてビジュアル・コミュニケーション・デザインを学ぶ。大学職員、グラフィックデザイナーを経て、ライターに転向。現在は、ライフスタイルやカルチャーを中心に、さまざまなWebメディアで執筆中。 インスタレーション作品や庭園など、感覚の指向性が変化する瞬間を捉えられる作品が特に好き。