「蔡國強展:帰去来」 〜生命の輪廻〜

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「蔡國強展:帰去来」 〜生命の輪廻〜

「蔡國強展:帰去来」が、今、横浜美術館で開催されている。

このオオカミの作品は初公開だ。

 

20. 《壁撞き》
《壁撞き》2006、99 体のオオカミ[鉄芯、藁、石膏、着色された羊の毛皮、合成素材]のレプリカ、 ガラス壁[合わせガラス、鉄骨ベニヤ貼り、塗装仕上げ台座]400×800×3200 (ガラス壁: 290×350×340)cm ドイツ銀行蔵、The Deutsche Bank Collection

Photo by KAMIYAMA Yosuke

 

蔡國強(さい こっきょう)/Cai Guo-Qiang

1957年、中国福建省泉州生まれ、現在はニューヨーク在住だ。

蔡國強は、1986年末から1995年まで日本に滞在している。筑波大学で学んだ経験もあり、
日本とはゆかりがあるため、日本語も流暢だ。
彼の火薬を使用した平面作品やパフォーマンスは世界的に評価が高く、
2008年北京オリンピックで蔡が視覚特効芸術監督としての花火を担当したことは記憶に新しい。

 

22. 《壁撞き》
《壁撞き》2006、99 体のオオカミ[鉄芯、藁、石膏、着色された羊の毛皮、合成素材]のレプリカ、 ガラス壁[合わせガラス、鉄骨ベニヤ貼り、塗装仕上げ台座]400×800×3200 (ガラス壁: 290×350×340)cm ドイツ銀行蔵、The Deutsche Bank Collection

Photo by KAMIYAMA Yosuke

 

「壁撞き(かべつき)」は、蔡國強展のメインビジュアルにもなっている彼の代表作の一つ。

99体のオオカミ達が壁に突き当たっているインスタレーション作品である。

この展覧会の最後のセクションに展示されているもので、オオカミ達が同じ方向に突進している空間はまさに圧巻だ。

2006年、ベルリンのグッゲンハイムの蔡國強のドイツでの展覧会「ヘッド・オン」で展示されたものだ。

オオカミ達が飛び越えようとしているのは、1989年崩壊したベルリンの壁と同じ高さ。

確かにベルリンの壁は崩されたが、壁によって形成された政治による人々への圧力や心の傷といった
「目に見えない壁」は、未だに存在している厳しい現実を、表現したものだ。

 

展覧会タイトル「 帰去来(ききょらい)」について。

中国人の詩人、陶淵明(365-427)の代表作「帰去来辞」から引用している。

「官職を辞め、故郷に帰り、田園と共に生きると決意を表した」という詩だ。

様々な経験を経て、自分自身と現実を見直し、自然と共に生きて行くことを謳っている。

これは、中国から日本を経てニューヨークに移り、様々な活動をして高い成果をあげた蔡國強が、
自分の制作活動の原点でもある日本に戻ってきた、彼の人生の回帰を同時に表しているそうだ。

 

1. 《夜桜》
《夜桜》2015、火薬、和紙、800×2400cm、作家蔵 Photo by KAMIYAMA Yosuke、Installation view of Nighttime Sakura,

3. 火薬ドローイング《夜桜》
《夜桜》2015、火薬、和紙、800×2400cm、作家蔵 Photo by KAMIYAMA Yosuke、Installation view of Nighttime Sakura,

巨大な和紙にドローイングする蔡國強。

 

「夜桜」

美術館に入るとグランドギャラリーに巨大な作品が広がっている。

「夜桜」という作品で、その迫力には驚かされる。

桜と火薬は、最高のコンビネーションかもしれない。
桜の儚さを火薬の爆発に掛けた表現が見事にマッチングしている。

 

10. 《人生四季:夏》
《人生四季:夏》2015、火薬、カンヴァス、259×648cm 作家蔵

 

「人生四季:春、夏、秋、冬」

彼は新たに、色彩を加えた火薬絵画に挑戦している。

今回の蔡國強展を開催するにあたって、彼は8日間横浜美術館に滞在し、これらの作品を制作した。

蔡國強が以前から興味を抱いていたという春画への挑戦だ。

彼は見事に火薬と色彩で、春夏秋冬を私達の人生と重ねて表現している。

 

2. 火薬ドローイング《夜桜》
火薬ドローイング《夜桜》(2015 年、火薬、和紙、 作家蔵)の爆破 Photo by KAMIISAKA Hajime

 

美術館での制作風景。かなり大規模である。

 

「春夏秋冬」

16. 《春夏秋冬》より「春」
《春夏秋冬》より「春」2014、火薬、磁器タイル、 240×300 cm、作家蔵 上海当代芸術博物館によるコミッション・ワーク Photo by Zhang Feiyu courtesy Cai Studio

 

また、こちらのタイトルも「春夏秋冬」ではあるが、表現の仕方は異なっている。

彼の故郷である中国福建省の泉州市は、中国有数の白磁の産地として知られ、
その白磁は世界各地に輸出されていたそうだ。

今回、彼は現地の職人達とのコラボレーションで白磁に四季の花鳥画を表した。

合計60枚にも上るパネルには、細かい牡丹、蓮、菊、梅等の四季を表す生物が磁土で作られているのだが、
その繊細さには驚かされる。

彼はここでも火薬で爆発させることで、春夏秋冬における自然の循環、大気の動きを表現している。

 

15. 《朝顔》
《朝顔》2015、陶、藤蔓、鉄、サイズ可変、作家蔵 Photo by KAMIYAMA Yosuke

 

「朝顔」

私は彼の作風はもとより、彼の人柄、考え方に惹かれる。

蔡國強は土地の人々や繋がりを大切にしている芸術家だ。
今回の展示もそうであるが、地元の美大生との共同プロジェクトや、
その国の歴史や文化を考えながら制作する背景には、彼の冒険心や、
その地域に対するリスペクトも含まれているのだろう。

そんな蔡國強の探求心や人間性が新しい表現を作っていくのだと思う。

 

13. 《朝顔》《春夏秋冬》
《朝顔》2015、陶、藤蔓、鉄、サイズ可変、作家蔵 Photo by KAMIYAMA Yosuke

 

横浜美術大学の学生達との共同作品。テラコッタの花と葉の上に火薬を爆破させて、繊細な陰影をつけた。

「春夏秋冬」のスペースに、天井から吊るされたこの作品は、焼土(テラコッタ)で作られており、
まさに四季の循環を表しているかのようだ。

 

5. 火薬ドローイング《夜桜》火薬絵画゙《夜桜》(2015 年、火薬、和紙、 作家蔵)の制作風景 Photo by KAMIYAMA Yosuke

 

横浜美術大学学生達との協同制作。

東京芸大映像研究科  英史研究 I geidai RAMによる映像作品も必見だ。
横浜美術大学との共同作品の制作過程が見られる他、その他にもこれまでの彼の作品を紹介する映像も流されていて、
彼を知らない人でも十分に楽しむことができる。

 

8. 火薬絵画《人生四季:秋》
火薬絵画《人生四季:秋》(2015 年、火薬、カンヴァ ス、作家蔵)の制作風景

 

「東洋、西洋にこだわらず、宇宙人的な視点で人類を見てきた。」

そう語る彼は、戦闘道具の火薬の爆発や破壊力に、宇宙的な観点を捉えて、アートとして制作を続けている。
爆発から消滅の道程に、人間の生から死を重ね合わせているようだ。

様々な経験を経て、自分の原点となる日本へ帰ってきた蔡國強のこれまでの集大成とも言える大規模な展覧会。
絶対に見逃さないで欲しい。

girls Artalkでも紹介している大地の芸術祭でも、新作を発表しているので、そちらもチェックしたい。

 

蔡國強2

 

 

【展覧会情報】

『蔡國強展:帰去来』

2015年7月11日(土)~10月18日(日)


会場:神奈川県 横浜美術館


時間:10:00~18:00
   (9月16日、9月18日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)


休館日:木曜


料金:一般1,500円 大学・高校生900円 中学生600円
※小学生以下無料

アクセス:みなとみらい線 みなとみらい駅3番出口からマークイズみなとみらい<グランドガレリア>経由徒歩3分。

横浜美術館公式サイト:http://yokohama.art.museum/index.html

蔡國強展特別サイト:http://yokohama.art.museum/special/2015/caiguoqiang/

 

文 / たなお