芸術は、着れる  PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服

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芸術は、着れる  PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服

女性なら…いや、性別問わず誰が見ても「カッコイイ!」と感じ、思わず惹きつけられる。

 

東京・丸の内におよそ130点にものぼるデザイン画、写真、そして世界最高峰の職人技による素晴らしいドレスや

小物が来日した。

 

19世紀後半の始まりから21世紀の今に続くパリ・オートクチュールの歴史を、パリ市立ガリエラ宮モード美術館の

コレクションによって紹介する本展。日本で開催されるのは初めてである。

2013年にパリ市庁内で開催され人気を博したファッション展を、今回三菱一号館美術館に合わせ再構築したと聞き

取材に行ってきた。

 

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「芸術は、着れる。」というキャッチフレーズが書かれた大きなパネル。

その入り口には「100年最先端」と書かれたポスターが期待を高まらせる。

三菱一号館の赤レンガ調で歴史を感じる外観もまた重厚感があり本展覧会のイメージにとても合っている。

エレベーターで上の階から見ていく。今回の展覧会は順路は必ず守った方がいい。

ほぼ時系列で並んでおり、流れに沿って鑑賞することで、時代の影響をよりわかりやすく感じることができる。

 

まずはコルセットで締め上げられてハイウェストなデザインと、腰からヒップにかけての膨らんだラインが

美しいドレスから始まる。

 

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身体のS字ラインが強調されることで女性らしいとされていた時代。

腰が絞られるている上にハイウエストとくれば脚長効果も見られ、現在に生きる女性の”理想の体系”に近づいたので

あろう。 更によく観察していくと例えばこのドレス。

 

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今回の展覧会の広告にも使われている黄色と黒を基調にしたドレス。

注目すべきは上半身は半袖の手編みのニットである。

現代ではカジュアルなイメージになりがちなニットという異素材を組み合わせているのだ。

より一層上半身と下半身にギャップが生まれ目をひいたことであろう。

さらに素材の組み合わせでは『パキャン』のアフタヌーンティー・ドレスは、裾が毛皮になっていたりと高度な

技術があるからこそできるデザインが多く見られる。実に面白い。

そして次の部屋に進むと「コルセットからの解放」によりガラリとラインが変わる。

 

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布をそのまま纏ったかのようなこちらのドレスがわかりやすいだろう。

身体のラインを強調するのではなく、その流れるようなシルエット。動いた時に女性らしい美しさがあっただろう。

また同時期に、”ファッションの近代化”は加速する。

 

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”ファッション界のピカソ”と例えられたポール・ポワレ氏が1912年に香水『 ロジーヌ』を発表。

とても可愛いバラの香水瓶で長女の名前がつけられた。

”デザイナーが香水を手掛ける”という偉業は彼が初めてで、その後現在に至るまで『シャネル』などの有名ブランドが

その宣伝効果の大きさを知り追随した。

ちなみにボトルは東洋的なイメージを象徴。

当時はジャポニズムがフランスで流行していたそうだ。

 

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この展覧会はどれも本当に貴重なものが展示されているが、ガラスケースに入っているにも関わらず、

細部の技術までじっくりと近くで見ることができるのも大きな魅力だ。

息を飲むほど繊細で美しい。

 

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一部はサービス精神旺盛なことに写真を撮ることが可能なコーナーもあるので、是非カメラを持って見に行くことを

おすすめする。

 

 

2階に降りるとガラリと雰囲気が変わる。

 

1950年代になると『クリスチャン・ディオール』の影響でニュー・ルックが生まれた。

再びコルセットが登場し、腰回りや袖の裁断が独特なスタイル。

また豪華絢爛なドレスだけではなく黒のスタイリッシュなスーツが流行するなど、女性の生き方が変わりはじめ

正装の幅が広がったように見える。

また「制作において最も扱うのが困難なのは肩と袖で『バレンシアガ』のようなクチュリエはラインに対する

厳密な感覚を備えていた」などのブランドごとの特徴を記載したキャプションも多く、ファッション好きには

たまらないはず。

 

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コルセットという点では歴史の繰り返しに感じるが、実際には全く異なるスタイル。

「ファッションは30年で一周する」とどこかで聞いたことがあったが、実際は何かひとつ同じ物や手法が使われて

いたとしても、パワーアップして全く新しいスタイルが生まれ続けているのだ。

 

今回の展覧会で、ドレスやそのデッサン以外に写真家であるフランソワ・コラール氏の作品も展示されている。

 

今では当たり前となっているが『CHANEL』や『Dior』など、帽子からドレス靴に至るまで同ブランドの

装身具でトータルコーディネートしたモデルによる写真は、現代の広告の先駆けだった。

 

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そして私が足をとめ、じっくり見入ってしまったのが「手」のシリーズ。

本展で作品が並んでいた一流ブランド・デザイナー達の手をうつした写真である。

シャネル氏の手は指が細く、タバコ片手 に仕事をし、意外にもネイルは地爪を整えているだけのシンプルな美しさ。

ジャンヌ・ランバン氏は大振りだがセンスのいいアクセサリーを身に着けていて、濃い色が塗られたネイルの爪の先は

少し禿げ、シミが目立つ味のある手・・・

など、思わず「あの美しいドレスはこの手で生み出されたのか・・・」と感動してしまった。

 

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また、物販コーナーも豊富。

展示品のポストカードなどの他に、今回の展覧会のテーマらしい個性的なアクセサリーから、ヴィンテージで

同じモノがないボタンまで幅広いラインナップの商品が並ぶ。

 

私も思わず帰ってシャツのボタンを変えてみようか・・・とボタンを本気で物色してしまった。

 

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近年、オートクチュールというと縮小傾向にある市場かもしれない。

長年市場を引っ張ってきた『イヴ・サンローラン』も、2002年にサンローランの引退会見後オートクチュール部門を

閉鎖した。オートクチュールというのは価格に見合うだけの神業のような技術が必要であり、とても大きな労力が

かかる。デザイナーに”代わり”がいないのだ。

その一方で工場で大量生産され、薄利多売の精神で多くの商品を世に出すファスト・ファッションが拡大してきた。

対象とされる顧客は元々かぶらないはずの2つの商売。

しかし100年前までは”質の良さやデザイン性”と”低価格”は「両立しない」ものだったが、今は機械の技術の進歩に

よりその関係性がどんどん変化してきている。

今回の展覧会を通じて私が感じたのが、それでもなお”オートクチュール”は”ファッション界”に絶対になくては

ならない存在だということ。

オートクチュールは単に”時代を反映した鏡”ではなく、顧客の要望やセンスがむしろ時代を変えることがあり、

そしてデザイナーが文化を生み出すことも可能にする。”時代”と”顧客”と”デザイナー”の化学反応で生まれ世界に

ただ一つの作品。

 

「100年、最先端。」なるほど、確かにかっこいい。

 

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会場の最後にドレスの人気投票もあるので是非特に魅力的だったドレスに一票を・・・!

 

文 ・ 山口 智子   写真 ・ 丸山 順一郎 

 

【情報】

芸術は、着れる  PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服

会期:2016年3月4日(金)〜2016年5月22日(日)  
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2  
時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30) ※祝日除く金曜ならびに会期最終週平日は20:00まで
   ※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜日 毎週月曜(但し、祝日・振替休日の場合と5月2日、5月16日は開館)  
観覧料:<当日券> 一般 1,700円 、高校・大学生 1,000円 、小中学生 500円