ぬくもりある「モノづくり」を感じるヒュッゲな町を旅しよう【北海道/旭川市・東川町】

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ヒュッゲ(Hygge)という言葉を知ってますか?
ヒュッゲとは、デンマーク語で「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気」という意味があります。まさに、ヒュッゲを体感できる場所が北海道の旭川市・東川町にありました。今回、旭川デザインウィークに合わせ、開催されているエキシビョンや工場見学、町の様子をお届けします。

標高2,291m北海道内最高峰の「旭岳」(写真左端)は大雪山連峰の主峰

 

毎年初夏に開催される「旭川デザインウィーク」

旭川デザインウィーク スペシャル インスタレーション展示風景

羽田から旭川までの飛行時間は1時間30分ちょっと。飛行機代は往復25,000円(*)
空港から便利な立地にありながら大自然に隣接した街であり、食べ物はラーメン・ジンギスカンが有名な地域。そして、「モノづくりの街」としても有名です。

日本には、いくつか「家具の産地」があります。
例えば、大川(福岡)・飛騨高山(岐阜)・徳島・静岡・そして旭川(北海道)です。
規模が大きい家具の産地では、家具に関わる工場が寄り添っていることで、お互いに協力しあい、品質をキープしつつも効率のよい生産ができるメリットがあります。
特色としては、近くに森林があり、家具の材料となる木材を入手し易いことから、自然と家具工場が生まれていった背景があるようです。

旭川の家具は120年余りの歴史があり、2016年からは毎年6月には旭川デザインウィークを開催してます。
また30年前から、3年に1回開催している国際家具デザインコンペティション旭川には世界中のデザイナーから応募があり、家具の産地として継続した試みをしています。
次回のコンペティションは2020年に開催予定です。
(*予約する時期により異なります。今回は筆者が予約した時期を目安にしてます)

今回の旭川デザインウィークのスペシャル インスタレーションを手がけたのはGINZA SIXや有名メゾンの空間デザインで知られるインテリアデザイナーのグエナエル・ニコラ氏。
デンマークのテキスタイルメーカーKvadrat(クヴァドラ)の生地を使用し、表現したのは旭川での1日の色合い奥へ進んでいくごとにカラフルな空間が広がり、最後は夕陽の赤が見えてきます。

ニコラ氏のトークイベントも開催されました

 

時間をかけて育んだ確かな技術と環境は信頼のコミュニティ

旭川家具の工場は随時工場見学を行っており、モノづくりに対する想いを工場メーカーの方から木材の特色からデザインの想い、職人の技まで直接聞くことの出来る貴重な体験ができます。
どこの工場も自社の強み・個性を持ち、他社メーカーと差別化している事で繋がり、コミュケーションが生まれているのが感じられました。

そのハブになっているのが旭川デザインウィークであり、産地全体で力を合わせ業界の活性化を目指してます。
また家具専門の訓練校卒業後の受け入れ体制があり、若手が育ちやすい環境も揃っていること、産地をあげて技能五輪への出場に挑戦していることで技術を高め合っていることも旭川が勢いのある家具産地である一因であると思いました。
(技能五輪全国大会は、青年技能者の技能レベルの日本一を競う技能競技大会のこと)

幾つか工場をご紹介します。

北の住まい設計社
廃校になった小学校を工房にし、職人の手仕事を活かした制作をされてます。6,000坪ある敷地内のショールーム・カフェも本当に素敵な空間です。

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〈オープンファクトリーについて〉
平日のみ事前連絡にて問い合わせください。(工場の都合によります)


コサイン
「家具を作る時に出る木の切れ端を生かすことはできないだろうか」と4名のクラフトマンが1988年に設立したコサイン。暮らしに寄り添うアイテムが多く、モノづくりへの愛を感じられる細やかさを感じました。

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<オープンファクトリーについて>
月・火・木・金
事前予約は不要。事前連絡ありだとスムーズに対応可能。
工場のお休み:土曜日、日曜日 ※土曜日は不定休なのでお問い合わせください。

大雪木工
4年前から「大雪の大切プロジェクト」が始まり、「モノづくりを続けていくために、大切なコトは何だろう」をテーマに新しい取り組みを実践されてます。今回は”入れる「匣」から、入る「箱」へ” 
箱が得意な大雪木工ならではの取り組みを体験出来倉庫を活かした展示空間がとても素敵でした。

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〈オープンファクトリーについて〉
ご希望の方、平日のみ事前連絡にて問い合わせください。

ガージーカームワークス
主に30代以下のメンバーが集まるチーム。技能五輪日本一が3名所属しているガージーカームワークス。工場の2階ではデザイナーユニット「621」との特別企画展示が行われていました。

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〈オープンファクトリーについて〉
平日のみ事前連絡にて問い合わせください。(工場の都合によります)

【番外編】

「北の住まい設計社」さんのカフェでは北海道の食材を使った美味しい食事が楽しめます!

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文化・デザインの基盤があるからこそ出来ること

旭川駅は建築家・内藤廣さんが設計

内装には木材を使用し、構内には旭川家具が展示され、休憩場所の椅子にも使用されています。目の前に広がるのは広大な空と土地です。

建設時に市民から支援を募り構内の壁に名前が刻印されている

また旭川市、東川町、東神楽町をまたがり活動される、世界的に有名な椅子研究家織田憲嗣氏がいらっしゃいます。織田氏は世界の貴重な椅子約1,350種類をはじめ、テーブルや照明、テーブルウェアなど約8,000点を所蔵されてます。

時代が証明したデザインの価値ある作品を多大な数を所有されている織田氏のコレクションは日本だけなく、世界中から展示貸し出しの依頼があります。

今回、東川町のせんとぴゅあⅠで「近代デザイン史を飾ったノルデザイン展ー織田コレクションからー」を開催中です。(-9/29(日)まで)

近代デザイン史を飾ったノルデザイン展ー織田コレクションからー展示風景

織田氏は、2015年に第1回となる「ハンス・J・ウェグナー賞」を受賞されました。
デザイン好きな人なら誰もが知っているであろうデンマーク家具デザインの巨匠ハンス・J・ウェグナーの生誕100年を記念して、氏の生誕地であるトナー市と同市立美術館
によって創設された賞です。
「ウェグナーに関する研究成果を世界に対して発表し続け、ウェグナーの今日的な評価の向上に大きく寄与した」と全審査員が一致して織田氏の受賞を決定したそうです。

現在、織田氏は日本初のデザインミュージアムの建設に向けて啓蒙活動を実施されてます。

「らしさ」を大切にする東川の心地よさ

東川町の町中はシャッターを押したくなる風景ばかり

旭川デザインウィークと連動している展示会場や家具工場も多く点在している旭川市に隣接する「東川町」は人口8,400人の町です。
36年も前から「写真映りの良い町」をテーマに掲げ、町づくりが行われてます。
なんと町民の半分が移住者というほど、移住者に人気の町です。

教育、文化、国際理解を大きな軸にした施策・事業・取り組みはどの町にもヒントになるものばかり、国内外から視察が訪れるそうです。

過疎でも、過密でもない「ちょうどいい」のバランスをとり続ける町の運営体制には「らしさ」を活かす要素が多く、訪れる人誰もが納得する町の心地良さは是非体験して頂きたいです。

教育機関・地域交流センター・文化施設が町の中心にある。小学校の入り口には彫刻家・安田侃(やすだ かん)の作品が。世界で活躍する作家の「本物」に触れる事が出来る
地域交流センターの一階にも彫刻家・安田侃の作品が展示されている

 

暮らしを楽しむための原点を気づかせてくれる場所

日々忙しく動いている現代の人にとって、時間は何よりも貴重なものです。

ただ普段その中で見過ごしてる大切なものが多いのだと広い空と大地を眺め感じました。

雲が流れて月が空に浮かぶのが見えるのを待つ。
車を1時間走らせ、そこでしか観えない景色に出会う。
家具に使用する木材の乾燥時間に3年の月日がかかる。

時間がかかるけど、かからないと出会えないものがあること。
きっと、ほんの少しの不便や手間は不器用に暮らしを愛することに繋がっていることに気づきました。

人と人、文化と人、自然と人がつながるあたたかな町へ旅に出て。

執筆・撮影:柿内奈緒美

旭川デザインウィーク 
http://www.asahikawa-kagu.or.jp/adw/

旭川デザインウィーク周辺マップ